男性不妊治療コラム

第9回 脊損でも子供をあきらめないで!

交通事故やスポーツ外傷で脊髄を損傷し、勃起障害や射精障害を生じたために、将来の挙児について悲観してしまったり、奥様との子作りをあきらめているかたがいらっしゃるのではないでしょうか?もちろん性交渉を行うためには、正常な勃起や射精が不可欠であり、脊髄損傷で勃起や射精に支障を来している場合は、自然妊娠での挙児の可能性は低いのが現実です。

勃起障害や射精障害では,精巣の中で精子は問題なく作られているかもしれないのに、それを挙児に結び付けることができないつらい状況がずっと続いていましたが、1992年に顕微授精 (卵胞内精子注入)が臨床応用されると状況は一変しました。今では少数でも精子を獲得できれば、それを用いて顕微授精をすることによって、お子さんを授かる期待があります。
しかし、質の悪い精子を顕微授精しても、当然ながら受精も妊娠もうまくいきません。つまり、いかに良い精子を手に入れるかということが重要になってきますが、精子を回収する方法には、バイブレーター刺激や電気刺激による反射によって射精を促す方法と精巣内から直接精子を採取する方法(TESE)があります。射精を誘発させる方法では、障害の部位や状態によっては反射が起こらないこともありますし、射精できても出てくるのは長くにわたって溜まっていた精子であり、さらには感染を合併していることもあり、顕微授精が不成功に終わり、最終的に精巣内から精子を回収する方法になることもしばしばです。

2017年に出された報告によると、TESEにより頚髄損傷では全例で精子が回収され、胸髄下部や腰髄損傷では回収率は80%前後で、支配神経により近い脊髄の損傷では造精機能に悪影響をおよぼしている可能性が考えられますが、それでも80%近くで精子は回収できており、挙児が期待されます.

しかし、脊損では勃起や射精の障害はずなのに、精巣のなかを探しても、精子の元になる細胞はあるのに、成熟した精子がいないということがあります。原因は分かっていません。でも、そういう状況でもあきらめるのは早いです。当院ではその後にホルモン治療を行って、精子が作られるようになり、二人のお子さんを授かられたかたもいらっしゃいます。
脊損男性でお子さんを授かられているかたはたくさんいらっしゃいますが、それぞれの状況が違うため、マニュアル通りに治療を進めれば良いというものではありません。触診や超音波検査,内分泌検査などの結果を総合的に判断して、お一人、お一人に最適な治療を判断しています。精巣内に精子が見つからなかったという場合でも次の手を考えます。

一般的に脊損では受傷からの時間がたてばたつほど挙児の期待は下がっていきます。クリニックは車椅子でも動きやすいバリアフリーとなっています。悩んでおられるのなら、相談に来てください。まずメールでも構いません。少しでも抱えておられる不安を軽くして、ご家族の明るい未来へのお役に立ちたいと願っております。

恵比寿つじクリニック 副院長 助川 玄

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