ED(勃起障害:Erectile Dysfunction)について
EDとは性交を行うに十分な勃起が得られないことをいいます。以前は「不能」や「impotence」などと侮蔑的な表現が使われていましたが、現在では「勃起障害(ED:erectile dysfunction)と呼ばれるようになりました。
性生活の活動性は非常に個人差が大きいものですが、EDの患者さんは20歳代前半から80歳代までの幅広い年齢層に渡っており、その患者数は全国で約900万人と推定されています。50歳以上になると40%以上の方がEDであるとも言われていますし、男性不妊症においても不妊の原因の約20%がEDといわれています。
EDの診断と主な原因とは?
EDは大きく「心因性」と「器質性(神経性、内分泌性、血管性など)」に分けられますが、もっとも多いのは両方に原因がある「混合性のED」です。
なにしろ50年前はEDの原因の90%は「心因性」と信じられていました。その後、夜間勃起現象のモニターや薬(血管拡張薬)を陰茎海綿体に直接注射して勃起を起こさせる検査などが開発され、EDに器質性の原因が多く関わっていることが明らかになりました。
しかし、日本でも1999年にホスホジエステラーゼタイプ5(PDE5)阻害薬(バイアグラ・レビトラなど)が登場すると、EDの診療は治療だけでなく、診断も大きく変わりました。
最近では、患者さんが受診されますと、最初に「IIEF5(日本性機能学会監修)」という問診表でEDの程度を評価し、もちろん診察はさせていただきますが、つぎにはPDE5阻害薬を服用できるかをチェックし、問題がなければまずPDE5阻害薬を使ってみていただきます。
PDE5阻害薬で患者さんとパートナーに十分満足が得られる勃起が回復すれば、それ以上の検査は行いません(米国泌尿器科学会では、50歳以上の患者さんについては前立腺癌の早期発見のため血中PSAの測定を薦めています)。
ED治療について
ED治療の主なものとしては、
- PDE5阻害薬(バイアグラ・レビトラ)
- プロタグランジンE1の尿道内注入
- 血管作働薬(プロタグランジンE1など)の陰茎海綿体への注射
- バキュームデバイス(陰圧で陰茎を勃起させる補助具)
- 陰茎プロステーシス
などがあげられます。
しかし、現在のED治療で最初に使われるのはPDE5阻害薬であり、(2)以下の治療はPDE5阻害薬が効かないときに試されるものです。
また、昔からEDといえば糖尿病が有名ですが、高脂血症・高血圧などの生活習慣病が基礎疾患としてある場合には、基礎疾患の治療がEDを改善させることが分かっています。
規則正しい生活と適度な運動、身体にいい食事などに心がける事が大切です。
ED治療薬について
勃起不全あるいは勃起障害のことを、ED(Erectile Dysfunction)と呼びます。
現在、わが国で使用可能なED治療薬はバイアグラ、レビトラ、シアリスの3種類で、すべてPDE5(フォスフォジエステラーゼ5)阻害薬です。これらは陰茎の海綿体平滑筋の緊張をゆるめ血流をよくすることで、十分な勃起に導きます。
それぞれのお薬に特徴がありますが、副作用や服用の際の注意点はほぼ同様です。
副作用
- 血管を拡げる作用により、血圧の低下や頭痛、鼻づまり、腹痛、顔面のほてりなどが起こることがありますが、程度は軽いことがほとんどです。
- 通常の服用に際しての血圧低下の程度は軽いものですが、硝酸薬と併用すると重篤な血圧低下をきたすことがあります。
- 持続勃起症(プリアピズム)は、性的な興奮がないのに勃起が長時間持続する状態で痛みを伴います。4時間以上にわたって勃起が続く場合は、持続勃起症が疑われるため、すぐに医師の診断を受けてください。
- 一時的にものが青く見えたり、まぶしいということがあります。網膜色素変性症の患者さんはED治療薬は服用できません。
服用に際しての注意
- ED治療薬をのんでも、性的な刺激がなければ勃起はしません。
- ED治療薬には性欲を増進させる作用はありませんから、やる気がなければ勃起しません。
- ED治療薬は心臓に悪影響をおよぼすことはありませんが、性行為は心臓に負担をかけます。勃起が回復したからといって、張り切り過ぎないようにしましょう。
- 性交渉のだいたい1時間前をめやすに、出来るだけ空腹時に服用しましょう。
ED治療薬
Viagra バイアグラ(50mg錠)
一般名 | クエン酸シルデナフィル製剤 |
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特徴 | のんで1時間くらいして効いてくる、効き目の持続は一晩というところ。食事の後(特に脂っこいもの)に服用すると効き目が弱くなる。 |
Cialis シアリス(10mg,20mg錠)
一般名 | タダラフィル |
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特徴 | バイアグラ、レビトラと違って効果が36時間くらい持続する、そのため食事と関係なくいつ服用しても良い。 |
ED治療薬と個人輸入について
バイアグラなどのED治療薬は医療機関以外の個人輸入で入手したバイアグラは、偽造品の可能性が高く、思わぬ健康被害も予想されます。
また、身体の状態をきちんと把握した上で処方されていないので何か副作用を起こしてもきちんと対処できなかったり、取り返しのつかないことにもなりかねません。
偽造バイアグラや中国製の健康食品などを使われることはある意味、怖いものがあります。
その詳細情報はファイザーのサイトでも詳しく解説されています。
あぶない偽造バイアグラ
https://www.ed-info.net/caution/index.html
今は個人輸入しても、診察を受けてもほとんど費用は変わりません。大事なお体を壊すような薬の使い方は最終的には大きな損失になります。
きちんとした医療機関での処方を心よりお勧め致します。
射精不全について
射精不全は多種多様で、それらを系統的に説明するのは難しいものがあります。
ここでは、患者さんの数が多い、膣内射精障害(不妊症の原因となります)と早漏について解説します。
膣内射精障害
A.マスターベーションでは射精可能だが、
膣内では射精できない(狭い意味の膣内射精障害)
(1) ED(勃起不全)がある場合
EDがあるために、膣内に挿入しても射精に至るまで勃起を維持できないものです。EDの治療を行います。
(2) EDがない場合
いわゆる遅漏とよばれる状態です。原因は心因性であることが多いですが、なかには非常に強い刺激でマスターベーションを行ってきたため、女性の膣内程度の刺激では射精に至らないという男性もいらっしゃいます。治療にあたっては、パートナーとの性交渉以外では射精しないこと、性交渉に際して飲酒しないことを守っていただき、
- パートナーの協力による行動療法
- バイブレーターやシャワーを使った刺激
- ヨヒンビンなどの薬物治療
などを行います。強いマスターベーションをやってこられた方は、行動療法で徐々に弱い刺激で射精できるように訓練していきます。
B.マスターベーションでも射精できない
(anejaculation、無射精症)
(1) オルガズムを感じない(anorgasmia、無オルガズム症)
無オルガズム症は原発性と続発性に分けられます。原発性の無オルガズム症の男性は生まれてからずっとオルガズムを経験したことがありません。マスターベーションを試みたこともあまりなく、心因性の原因が多いと考えられています。特に夢精はあるということであれば、心因性であることが強く疑われます。ヨヒンビンなどの薬物とバイブレーターの併用で治療しますが、こういう男性はパートナーに自分と同様に性的なことにあまり興味がない女性を選ぶことが多く、行動療法に際しては積極的な協力が得られない場合もあります。続発性の無オルガズム症は、以前はあったオルガズムを現在は感じなくなってしまったというもので、神経の障害が原因になることが多く、代表的なものには脊髄損傷があります。また、抗精神薬の副作用でオルガズム障害が起きることが知られています。
(2) オルガズムあるいは射精した感じはあるのに精液の射出がない
a.精液が尿道に射出されない(aspermia、無精液症)
専門的にはaspermia(無精液症)あるいはemissionlessと呼ばれますが、精液の尿道への射出に必要な精路(精巣上体-精管-精嚢-前立腺)の収縮が起こらなくなった状況で、オルガズムの後の尿を調べても精子が見られないことで診断されます。交感神経の障害によることがほとんどで脊髄損傷、骨盤内や大動脈の手術の合併症による神経障害、糖尿病などで起こりますが、まれに先天性の内分泌(ホルモン)異常の患者さんでみられることがあります。薬の内服による治療の効果は悲観的です。挙児を希望される場合は、薬物、バイブレーター、電気刺激などで人工的に射精させて精子を得る方法が試みられますが、顕微授精の技術が進歩した現在では、精巣上体や精巣内の精子を回収して顕微授精したほうが良いと考えられる場合もあります。
b.精液が膀胱に逆流している(逆行性射精)
オルガズムを感じた後に尿を出していただき、そのなかに精子が見られれば逆行性射精ということになります。逆行性射精は、射精時に膀胱の出口が閉鎖しないため、精液が膀胱に流れこんでいるものです。糖尿病や骨盤内手術の合併症による神経障害、前立腺手術による膀胱頚部の開大などが原因になります。
治療としては、
- 交感神経を刺激する薬や抗うつ薬などによる薬物療法で精液が外尿道口から出るようにする
- 挙児をご希望で、膀胱内の精子がうまく回収できれば、その精子を人工授精や体外受精/顕微授精に使用するなどがあります。
※a.無精液症とb.逆行性射精の原因は重なっているものが多く、原因になっている病気が進行して、逆行性射精が無精液症になったり、最初はあったオルガズムがやがて感じられなくなるということもあります。
早漏
早漏を定義することは非常に難しいです。
一般的には膣内に挿入後1分以内に射精してしまうか、あるいは性交渉の半分以上でパートナーを満足させる前に射精してしまう場合とされています。しかし、ストップウォッチを持ってsexするわけではありませんし、パートナーの満足は個人差が大きく、その時々の状況によっても異なります。早漏の原因はほとんどが心因性のものですが、なかにはED(勃起不全)があり、膣内に挿入するまでに非常に強い刺激が加えられているため、挿入するとすぐに射精してしまうということもあります。
治療としては、
- 行動療法(Masters & Johnsonの方法がよく知られています。パートナーの協力が不可欠です)
- 陰茎の感覚を訓練する器具
- 陰茎の感覚を鈍くさせる塗り薬(局所麻酔薬のゼリーなど)
- 抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- EDが原因の場合はEDの治療
などがあります。