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第11回 新型コロナワクチン接種後の発熱による精子への悪影響

新型コロナワクチンの接種が急速に進むなかで、ワクチンの精子に対する影響を心配されているかたもおられると思います。
ワクチンそのものの作用については、これからデータが集められ、徐々に明らかになってくるのを待つしかありませんが、副反応として非常に高頻度にみられる発熱(モデルナ製の2回目接種後には80%、ファイザー製でも40%)の精子への影響について考えてみます。

精巣(睾丸)が温められると精子を作る働きが悪くなることは古くから知られており、健康男性に週2回3カ月間サウナ(最近また人気ですよね)に入ってもらうと、精子の数も動きも不良になり、サウナを止めると元に戻ることが報告されています(Human Reproduction 2013; 28: 877–885)。

さらに発熱と精子について調べた論文を探してみますと、発熱は予期せず起こるもののため計画的にデータを集めることはできていませんが、二つほど症例の報告が見つかりました。
ひとつ目は、27人の健康男性に1年間月1回の精液検査を受けてもらったものです(History of febrile illness and variation in semen quality. Human Reproduction 2003; 18: 2089–2092)。27人中15人が期間中に1回以上の発熱があり、その後に精子の濃度、動き、形が悪くなりましたが、個人差が大きく、逆に精子の数が増えた男性もいました。精子濃度は発熱後の最大56日目まで影響を受けましたが、動きや形への影響は最大で発熱32日後まででした。

もうひとつは、47歳のボランティア男性の精液所見を2日間の発熱(39-40℃)前後で追跡したデータです(High risk of temporary alteration of semen parameters after recent acute febrile illness. Fertility and Sterility 2007; 88: 970.e1-7)。精子数は発熱後58日目までは低下していましたが、79日目には正常に戻り、精子の動きは発熱後37日目までは不良でしたが、58日目には元に戻りました。また精子のDNA損傷も発熱後には明らかに増えています。

原因がなんであれ高熱を出すと精子を作る働きが低下するのは間違いないですが、個人差が大きく、まったく影響を受けない男性もおられます。もし新型コロナワクチン接種後に発熱があり、精子へ悪影響が出たとしても3カ月あれば元に戻るはずです。自然妊娠や人工授精についてはとくに気にされなくていいのではと考えますが、体外受精のスケジュールについては慎重に判断される必要があるかもしれません。
新型コロナワクチン接種の副反応として熱が出る頻度が高いことは、研究者としては発熱の造精機能への真の作用を解析できる絶好のチャンスです。今後、世界中からどんどんデータが出てきて、発熱の精子への影響がはっきりするはずです。

辻 祐治
恵比寿つじクリニック

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