新型コロナワクチンの接種が子作り世代まで拡大されてきて、「妊活中はワクチン打たないほうがいいですよね?」という質問をよく受けるようになりました。その答えになるような論文が発表されたのでご紹介しましょう。すでに色んなところで取り上げられていますが、マイアミ大学からのJAMA(米国医師会雑誌)に報告されたデータです(June 17, 2021. doi:10.1001/jama.2021.9976)。
25歳から31歳の健康なボランティア男性45人の精液所見について、新型コロナワクチン(ファイザー社製あるいはモデルナ社製)接種前後で精液所見を比較しています。結果をみてみると、新型コロナワクチン接種後の精液量、精子濃度、総運動精子数のすべてが接種前より良くなっていました。
さらに45人中の8人は接種前の精液検査では「乏精子症」でしたが、接種後には7人は精子濃度が良くなり「乏精子症」ではなくなりました。残りの一人だけが「乏精子症」のままです。
若く健康な男性に限定されたデータですが、新型コロナワクチンによる精子への悪影響はないようです。一方で新型コロナに感染すると精液所見が悪化するという報告はいくつかあります。新型コロナに感染する前から精液所見が悪かったのかもしれませんし、発熱の影響で精液所見が一時的に悪化しているのかもしれませんが、もしかすると本当に精子に悪影響があるのかもしれません。
新型コロナについてはまだ分からないことばかりですが、ワクチン接種による感染予防や重症化抑制の効果は明らかです。子作りに励もうという男性が新型コロナワクチン接種をためらう理由はありません。
恵比寿つじクリニック 辻祐治