男性不妊の恵比寿つじクリニック
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「男性型脱毛(AGA)の治療薬(フィナステリド,デュタステリド)と男性不妊」

 テストステロン(男性ホルモン)は5α還元酵素によりジヒドロテストステロン(DHT)に変化することで,より強い男性ホルモン作用を発揮します.男性型脱毛(AGA)治療薬のフィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ,アボルブ)は5α還元酵素を阻害することでDHTを減らし,脱毛を抑えようという薬です.

 男性ホルモンの働きを弱めようというお薬ですから,性機能が落ちるのじゃないかと誰でも考えるはずです.もともと前立腺肥大症の治療薬で,副作用として性機能低下が報告されていました.男性型脱毛の治療では,前立腺肥大症より服用量が少ないので,あまり心配しないでよかろうと思われていましたが,非常に精子の状態が悪くなる患者さんがいらっしゃいます(Finasteride use in the male infertility population: effects on semen and hormone parameters. Fertility and Sterility 2013; 100: 1542-1546).フィナステリドの添付文書にも副作用として,性欲の低下が1-5%未満,ED(勃起不全),射精障害,精液量の減少が1%未満とはっきり書かれており,EDと射精障害については薬を中止しても元に戻らなかった患者さんがおられると記載があります(https://www.msdconnect.jp/static/mcijapan/images/pi_propecia_tab.pdf).男性不妊症,精子濃度の減少,無精子症,精子形態の異常については頻度不明になっていますが,これらは自覚症状がなく,精液検査を受けなければ分からない副作用です.調べられていないだけで,頻度が低いわけではなく,とくに元々精子の状態が良くない男性不妊症の患者さんでは,精子に非常に悪い影響を与えるというのが実感です.

 さらに,妊娠中の女性の体のなかに入ると,男の胎児の生殖器に異常を起こすおそれがあることが厚生労働省から注意喚起されています(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1a.html).薬を飲んだり,触ったりしなければ良いようですが,これらの薬を服用していると,ごく微量ですが精液中にも出てきます.何もないとは思いますが,万が一と考えるとちょっと心配です.

 また,フィナステリド,デュタステリドを服用している患者さんでは,2型糖尿病発症のリスクが高いとの報告も出ています(Incidence of type 2 diabetes mellitus in men receiving steroid 5α-reductase inhibitors: population based cohort study. BMJ 2019; 365:1204).
男性型脱毛(AGA)の治療のためにフィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ,アボルブ)を服用されているかたは,お子さんがお生まれになるまでは中止してください.喫煙と違って,ずっと止めてくださいとお願いしているわけではありません.お子さんを授かられるまでです.幸いなことに,薬は中止すれば,副作用は消失しますので,子作りをすでに始めていても,これからでも,これらの薬を服用しておられるなら,まずは精液検査で精子の状態を確認するべきです.

追:男性型脱毛(AGA)の発毛促進のためにフィナステリド,デュタステリドに加えてミノキシジルが処方されていることがありますが,不妊への影響はないようです.ミノキシジルは血圧を下げる薬(降圧薬)として開発されましたが,副作用として体毛の増加があり,そちらが注目されることになった薬剤です(バイアグラも降圧薬として開発されたものの,副作用で勃起があり,EDの治療に使われるようになったのでよく似ています).ただ内服すると血圧がかなり激しく下がることがあり,男性型脱毛には塗り薬(リアップですね)として使用され,内服薬は日本では未承認です.子作り中はフィナステリド,デュタステリドは中止しなければなりませんが,どうしても脱毛が気になるなら,ミノキシジルの外用薬をお使いください.ミノキシジルの内服は,副作用が心配ですので,おすすめしません.

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