男性不妊の恵比寿つじクリニック
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「オーストラリアでの精子凍結40年の記録」

 がん治療が進歩し,治る病気になったことにより,がんにかかったとしても,その治療だけでなく,治療後の子作りを考えておかねばならない時代がきています.将来の子作りのためには,精巣(睾丸)の機能にダメージを与えるような治療(代表的なのは抗がん剤や放射線治療ですね)の前には精子を凍結して保存しておくべきですが,今回はオーストラリアのConcord総合病院で1978年から2017年の40年間に行われた2,717人の精子凍結の記録(Sperm cryopreservation prior to gonadotoxic treatment: experience of a single academic centre over 4 decades.Human Reproduction 2019; 34: 795-803)をご紹介します.

 40年間で2,717人の精子が凍結されましたが,うち2,085人は悪性腫瘍,234人は悪性腫瘍以外の病気,そして398人は健康男性が精子を提供したものです.病気の患者さんでは,やはり健康な男性に比べて,精子の状態が悪く,無精子症のかたも4%いらっしゃいました.

実際に子作りに使用された精子は7%で,63%は使用されずに破棄されおり,意外に治療的意義が低いのかと思われますが,凍結精子があることが,がん治療の際に精神的な支援となり,治療成績にもプラスの効果をもたらしているようです.

 精子凍結は,精巣(睾丸)を傷害する治療を受けるにあたって,将来の子作りに希望をもつために,ぜひとも推奨されるべき方法ですが,日本では医療関係者ですらその必要性を理解していないことがあります.われわれも啓蒙に努めてまいりますが,どうぞ皆さんも知っておいてください.

助川玄
恵比寿つじクリニック

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