サクランボ摘み(cherry picking)は、米国において医療機関が利益率の高い患者(美味しいサクランボ)を選んで治療するという意味合いで使われる言葉です。最近は日本でも、医療、介護で同様なことが起きていることがネットニュースにもとり上げられていますが、精索静脈瘤の治療でもそういう状況があると耳にしました。以前に停留精巣やそ径ヘルニアの手術を受けた患者さんは精索静脈瘤手術をやってもらえないことがあるそうです。
確かに過去に停留精巣の手術をされた患者さんは精索の内外が癒着していて、精索静脈瘤手術のなかで一番難易度が高いです。その治療成績を昨年11月に名古屋で開催された日本生殖医学会で発表しました(助川玄・他:停留精巣固定術後に合併した精索静脈瘤の治療成績)。当院で精索静脈瘤手術を受けられた患者さんのうちで、以前に停留精巣の手術を受けられていた46人について、手術前と手術後3か月の精液検査の結果をみてみると、なんと83%で改善していました(精索静脈瘤手術全体の成績は70%)。確かに手術は大変に難しく、苦労しましたが、手術中も手術後もとくに問題は起きていません。この成績をみれば、停留精巣の手術をした患者さんも、精索静脈瘤があれば手術するべきであることに誰も異論はないはずです。
われわれは美味しいサクランボだけ摘むようなことはしません。われわれはお子さんを授かっていただくために最善の治療を行うのみです。
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