これまでもこのコーナーで非閉塞性(原発性)無精子症でも精索静脈瘤があれば手術したほうが良いというデータを紹介してきましたが、ついに顕微鏡下の精巣内精子回収術(microdissection TESE)を受けた患者さんで精索静脈瘤手術の有用性を比較した論文が世界で一番権威のある泌尿器科の学術雑誌Journal of Urologyの最新号(10月号)に発表されました(J Urol 2009;180:1500)。
非閉塞性無精子症でmicrodissection TESE(MD-TESE)を受けた患者さんのうちTESEの前に精索静脈瘤手術を受けた66人と受けなかった30人を比較しています。精索静脈瘤を受けた患者さんの53%でMD-TESEにより精巣内に精子が見つかったのに対し、手術を受けなかった患者さんでは30%にしか精子が見つけられず、明らかに手術したグループで精子が見つかる確率が高いことが分かりました。さらに精子が見つかった患者さんの顕微授精の結果をみてみると、受精率は手術グループの63.9%に対し手術しなかったグループでは53.6%、妊娠率も手術グループ:31.4%に対し手術しなかったグループ:22.2%と手術したほうが良い結果のようでしたが、これは統計学的には明らかな差とはいえないようです。
精巣内で精子が作られていない非閉塞性無精子症でも、精索静脈瘤があるならMD-TESEの前に精索静脈瘤手術を受けたほうが良いとの結論になりますが、実は今回の比較には精索静脈瘤手術の後に精液中に精子が出現した患者さん達は含まれていません。この方々を含めると非閉塞性無精子症における精索静脈瘤手術の有用性はさらに高く評価されるものと考えられます。