精索静脈瘤を手術すると自然妊娠のチャンスが2.8倍高くなるなど、男性不妊患者さんにおける精索静脈瘤手術の治療効果は明らかですが、体外受精/顕微授精の際にも手術をしたほうが良いのかははっきりしていませんでした。
10月号の米国泌尿器科学会雑誌(Journal of Urology)に顕微授精の前に精索静脈瘤手術をした患者さんとしなかった患者さんの治療成績の比較が報告されています(J Urol 2010; 184: 1442)。
精液所見が不良で精索静脈瘤を認めた242人の不妊男性における顕微授精の治療成績の比較です。80人は顕微授精の前に「そ径下精索静脈瘤手術(当院でおこなっているのと同じやり方です)」を受け、162人は手術しないまま顕微授精を施行されました。精索静脈瘤手術を受けたグループでは運動精子の数が増え、精索静脈瘤手術を受けなかったグループと比較すると妊娠率は45%に対し60%と高く、生児の分娩率(出生率)も流産が減ったことにより31%に対し46%と良好でした。
精液所見がたとえ自然妊娠が望めるところまで改善しなくても、精索静脈瘤手術を受けることにより顕微授精の治療成績が向上するという結果です。これまではどうせ顕微授精を受けるのであれば、精索静脈瘤があっても治療しないという考えかたが大勢を占めていたのですが、どうも顕微授精前にも精索静脈瘤手術を受けたほうが良さそうです。また、顕微授精を繰り返してもなかなか妊娠しないとか妊娠しても流産するという場合には、さらに顕微授精をやる前に精索静脈瘤がないか診察してもらうが賢明ですね。精索静脈瘤手術は生命保険の手術給付も受けられます。