身体の調子が悪ければ,精子の状態も良くないんじゃないかと誰でも思うはずです.実際に精液所見は男性不妊だけでなく健康のバロメーターでもあり,精液検査の結果が悪かったことをきっかけに全身的な病気が見つかることもあります.
ならば,病気を治療すれば精子は良くなるのでしょうか?この疑問に答えるのが,山口大学の白石先生が米国生殖医学会雑誌に発表された論文です(Effects of medical comorbidity on male infertility and comorbidity treatment on spermatogenesis. Fertility and Sterility 2018; 110:1006-1011).
1995年から2017年までの間に山口大学を受診した3,328人の男性不妊症患者と精液所見が正常な男性452人について健康状態や精液検査の結果を調査しています.不妊男性の22%が高血圧や高脂血症,高尿酸血症,皮膚疾患などをもっていたのに対し,精液所見が正常な男性では9%と,精液所見が悪い男性は不健康です.さらに男性不妊患者間でも,健康状態が悪い男性のほうが精液所見,精巣(睾丸)の大きさ,ホルモンの値が明らかに不良でした.
そこで健康状態を改善するべくこれらの疾患を治療してみると,精液所見も改善しました.とくに高血圧を治療すると動きの良い精子の数がすごく増えています.
精液検査の結果が不良ならば,全身的な検診が必要で,もし悪いところが見つかれば,その治療で精子が良くなる可能性があります.
ただ,この調査においても全身的な治療より,精索静脈瘤の手術のほうが精子を改善させる期待度が高いという結果でした.男性不妊症の治療における精索静脈瘤手術の重要性は絶対です.
助川 玄
恵比寿つじクリニック