パートナーとのコミュニケーションも大切にしたい
〜男性不妊の気がかり(つじクリニック辻祐治院長が回答をしています)
Q. 不妊検査で精索静脈瘤とわかりました。治療したら自然妊娠が可能ですか?
夫(34歳)、妻(34歳)結婚3年、妊活歴3ヶ月
先日、妻といっしょに不妊検査を受けました。妻には特に悪いところはありませんでしたが、自分に精索静脈瘤があることがわかりました。今後はどのような治療にすすむのでしょうか?治療して精索静脈瘤が治れば、自然妊娠をめざすことができますか?(エピさん)
A. 精液検査の結果がよくなかった場合は、手術をしたほうがいいでしょう。
精索静脈瘤は、おなかから精巣の静脈に血液が逆流し、圧がかかってコブ状になったものです。男性不妊症の患者さんの40%、正常な男性でも15%に見られるとされる病気で、めずらしいものではありません。
精液検査もなさったと思いますが、結果はいかがでしたか? もしその結果がよくなければ、手術をしたほうがいいと思います。問題がなければ、現時点では手術しなくてもかまいません。ただ、精索静脈瘤は2人目不妊に多くみられます。精子を作る機能は年齢とともに下がっていきますが、精索静脈瘤があると機能の低下が早くなると考えられています。つまり、手術をしないままだと、いざ2人目をというときに、精液の所見が悪くなっている可能性があるのです。
熟練した医師が行えば、手術には合併症や後遺症等のリスクはほとんどありません。手術の方法にはいくつかあり、当院では自費治療で、最も治療成績の良い方法を行っています。保険適用でやっているクリニックもあります。術後に自然妊娠が可能になることもあります。手術をする場合は、手術前も手術後も精液検査や超音波検査できちんと経過をみてもらえるクリニックを選びましょう。
Q. タイミング法で夫が勃起不全に。人工授精に進んだ方が良いでしょうか
夫(30歳)、妻(29歳)結婚2年、妊活歴1年
近所の婦人科でタイミング指導を受けてから、夫が勃起不全になりました。「今晩だから、早く帰ってきてね」と言われるのがイヤみたいです。私もだんだんプレッシャーを感じてきました。人工授精にすすんだほうがいいのでしょうか?(こうのとり待ってますさん)
A. ED治療薬を使って性交渉を。それでも無理なら人工授精にすすんでみては?
日本人男性は、「今日はタイミングをとる日だからね」と言われたり、スタミナのつく料理が用意されてたりしていると、ほとんど全員が勃起不全(ED)になります。ですから、「自分(夫)はダメ」と思う必要はありません。
治療にはED治療薬が有効です。日本ではバイアグラ、レビトラ、シアリスの3種類と、そのジェネリックが使われており、いずれも自費診療になります。バイアグラは服用後1時間後ぐらいから5〜6時間効果が持続、レビトラは服用後10〜30分で効果が現れ始めて、効果の持続はバイアグラと同じくらい、シアリスは服用後1〜2時間後から効き始めて36時間効果が持続と、それぞれ特徴が異なります。注意点としては、ED治療薬は精力剤ではないため、性的刺激がなければ勃起はしません。
まずはED治療薬を使って性交渉を持ってみて、それでもうまくいかないようなら、人工授精にすすまれたらいかがでしょうか? 夫にマスターベーションで射精してもらい、その精液をスポイトなどで膣に注入するシリンジ法というものもあります。ただしどちらの場合も、性交渉を持たなくなってセックスレスになってしまう可能性があるので、並行して性交渉も持ち続けるよう、気を配りましょう。
Q. 夫が不妊治療に協力的ではありません。受診するのは泌尿器科でもいいでしょうか
夫(28歳)、妻(28歳)、結婚1年、妊活歴なし
夫は不妊治療にあまり協力的ではなく、「自分は大丈夫」と根拠のない自信を持っています。精液検査だけでも受けてもらいたいのですが、婦人科クリニックが恥ずかしいようです。夫だけ、泌尿器科でもいいでしょうか? 最近精子の状態をチェックできるアプリもありますが、有効ですか。(美子さん)
A. 不妊の約半分は男性側にも原因があります。泌尿器科で検査を受けましょう
もともと精液検査は婦人科ではなく、泌尿器科で受けるべきものです。泌尿器科で検査をしてください。それもハードルが高ければ、まずは専用のキットを使ったアプリ判定を試してみてもいいでしょう。ただし、アプリは誤差が出やすいです。説明をきちんと確認してやり方を順守し、何回か行うようにしましょう。また、WHOが発表している精液検査の基準値は最低基準です。同じぐらいだからといって妊娠に問題ないと判断してはいけません。
アプリを使ってみて半年たっても妊娠しなければ、泌尿器科できちんと検査を受けてください。簡単な精液検査のみであれば、保険適用です。精液の状態はその時によって変わるため、少なくとも2回は行う必要がありますが、治療は悪い方の結果をもとにすすめていきます。子づくりにあたって、精子の状態を改善するには、喫煙は厳禁です。睾丸をあたためないよう、サウナや長風呂、きつい下着も避けて下さい。飲酒はほどほどに、バランスの良い食事をとり、生活習慣病に気をつけて。そして、新鮮な精子が作られるよう、どんどん射精するようにしましょう。