何気なくTVを見ていたら、やる気を出すために男性ホルモンを注射しているという芸人さんが(以前Xに投稿しました)最近ご結婚されたとおっしゃっていました。びっくりしました。てっきり既婚者でお子さんもおられるものと思っていましたから。
男性ホルモン(テストステロン)を注射すると、体のセンサーが男性ホルモンは十分足りていると感知するため、脳からの精子を作るように促すホルモンが分泌されなくなり、精子がいなくなってしまったり、精液所見が悪化したりして、男性不妊の状態になってしまいます。
男性更年期障害(LOH症候群)の治療には男性ホルモンの補充が必要ですが、最近は泌尿器科以外で男性ホルモン注射を安易に行っているクリニックがあり、基準を満たしていないにもかかわらず注射されていることも多いようです。当院には2013年~2020年の7年間に男性更年期障害の治療を目的として男性ホルモンを注射されている患者さんが7名受診されましたが、うち3名は男性ホルモン治療の適応基準を満たしていませんでした。
やる気を出すとか、筋肉の増強目的で、男性ホルモンを注射するのはやめましょう。精子を作る働きだけでなく、心臓などの機能にも悪影響をおよぼします。男性更年期障害で男性ホルモンを上げなければならない状況なら、直接男性ホルモンを注射するのではなく、間接的に男性ホルモン作る働きを活性化しなければなりません。
現在男性ホルモンを注射されている方、急いで精液検査を受けてください。きっと精子の状態が悪いはずです。お子さんを授かるためには、一日も早く精子を作る働きを回復させなければなりませんが、その回復程度やスピードはそれぞれ違います。個人個人の状況を正確に把握し、一人ひとりに合わせた適切な治療を選択する必要があります。以前に男性ホルモンを注射されていた方、現在も注射を続けている方はご相談ください。
助川 玄
恵比寿つじクリニック