体外受精の禁欲期間=1日以内!
「体外受精をするときの禁欲期間は何日くらいがいいのですか?」という質問をしばしば受けます。
精液検査の世界基準である世界保健機関(WHO)の精液検査マニュアルでは禁欲期間は2日~7日とされているため、不妊治療にあたっても同じくらいでと言われることが多いかもしれませんが、これは検査のための禁欲期間であって、治療目的のものではありません。
精子が不良で体外受精をしようというときの禁欲期間について、コーネル大学のSchlegel教授からの提言が米国生殖医学会雑誌の3月号に掲載されました(We are giving the wrong patient instructions for semen analysis before assisted reproductive technology. Fertility and Sterility 2024; 121: 426)。
Schlegel教授は顕微鏡で精巣(睾丸)のなかを見て精子を採ってくるmicrodissection TESEという技術を最初に報告した先生です。
最近の研究を集計した報告では、禁欲期間が短いほうが体外受精の妊娠率、出産率が良好で、精子のDNA損傷も少ないことが分かっている。禁欲期間を短くすると、少ない精子がさらに少なくなるのではとの心配があるかもしれないが、精液全体に100個以下しか精子がいない男性(cryptozoospermia)に、顕微授精前日に精液を採取し、さらに当日も6時間にわたって3回連続精液を出してもらったが、当日の精子濃度や精子運動率は同じかそれ以上であった。
短期間の禁欲(1日以内)あるいは超短期間の禁欲(数時間)でも、精子数の減少を心配する必要はなく、むしろ精子の質(DNA損傷)は改善するので、ART(生殖補助医療=体外受精,顕微授精)では採卵当日に1日以内の禁欲で精液を採取することを推奨する。
精子の状態が良くない男性ほど、禁欲期間を短くし(1日以内)、質の良い精子で体外受精に臨まれるべきでしょう。