診療内容

男性更年期について

男性更年期とは

男性更年期障害とLOH(加齢男性性腺機能低下)症候群

男性にも女性と同様に更年期障害があることは以前から知られていましたが、メディアに取り上げられ注目されるようになったのは、はらたいらさんがご自身の体験を本にされてからです。そのせいか、わが国では男性更年期外来を受診される患者さんは精神症状が前面にでていることが多く、欧米での性的な能力や肉体の維持、アンチエイジングを目的としての受診とは大きく異なります(先日もシルベスター・スタローンが男性ホルモンの注射を所持していて、オーストラリア入国の際に問題になりましたね)。

男性更年期障害はストレス、うつ病など様々な因子が複雑に絡みあって引き起こされるもので、その因子の一つが加齢に伴なう男性ホルモンの低下(加齢男性性腺機能低下症候群、LOH症候群)と考えられています。男性更年期外来を受診された患者さんのなかにはうつ病が隠れていることも非常に多く、LOH症候群の診断は慎重に行わなければなりません。しかし、思ったより人数は少ないもののLOH症候群の患者さんは確かにいらっしゃいますし、男性ホルモンの補充によりQOL(生活の質)がめざましく改善する男性も少なくありません。

2007年1月に日本泌尿器科学会と日本Men’s Health医学会から「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き」が刊行され、 男性ホルモンの補充療法についても指針が示されました。当院ではこの手引きに準拠して、男性更年期障害/LOH症候群の診療を行っています。

LOH症候群の症状

体毛と皮膚の変化体毛と皮膚の変化

LOH症候群の主要な症状は以下の7つとされています。

  • リビドー(性欲)と勃起の質と頻度、とりわけ夜間睡眠時勃起の減退
  • 知的活動、認知力、見当識の低下および疲労感、抑うつ、短気などに伴う気分変調
  • 睡眠障害
  • 筋肉量と筋力の低下
  • 内臓脂肪の増加
  • 体毛と皮膚の変化
  • 骨減少症と骨粗しょう症に伴う骨塩量の低下と骨折のリスク増加

※ご自分で分かりやすいのは、早朝勃起(朝だち)が減る、体毛(髪の毛ではなく、顔の髭や脛毛)が薄くなる、精巣(睾丸)が小さくなる、などでしょう。

男性更年期の診断

LOH症候群の症状

LOH症候群のチェックリストにはいくつかのものがあり、病院ではaging males’ symptoms (AMS)スコアが使用されることが多いですが<AMS>、まずご自分でやってみられるならMorleyのものが簡単でいいでしょう<Morley>。

このリストの(1)か(7)に当てはまるか、あるいは(1)か(7)以外の項目のうち4つ以上当てはまるなら、LOH症候群が疑われます。

しかし!泌尿器科を受診する前にもう一つチェックリストをやりましょう<MINI>。
このリストで、(1)か(2)に当てはまって、さらに当てはまる項目の合計が5つ以上なら、うつ病かもしれません。
泌尿器科を受診する前にまず精神神経科/心療内科を受診してください。

LOH症候群の診断には血液中の男性ホルモンの測定が必須です。男性ホルモン(テストステロン)にはいくつかの種類がありますが、日本人男性では遊離型テストステロン(活性型のホルモンでテストステロン全体の1~2%を占める)がLOH症候群の診断に最も信頼できる指標であるとされています。

「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き」では遊離型テストステロンが8.5pg/ml未満なら男性ホルモンが明らかに低いと判断し、8.5pg/ml以上から11.8pg/ml未満の男性を男性ホルモンが低下傾向にある(ボーダーライン)と判断することを推奨しています。

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男性更年期の治療

LOH症候群の治療は男性ホルモンの補充が中心となりますが、男性ホルモン補充をやってみるかは血液中の遊離型テストステロンの値で決めます。

遊離型テストステロンが

  • 8.5pg/ml未満であれば男性ホルモンの補充を第一に行います。
  • 8.5~11.8pg/mlなら他の治療と有用性/リスクの比較を行い判断します。男性ホルモンを3ヵ月間補充して、症状が改善するかをみてみるのも有用なやり方です(治療的診断といいます)。
  • 11.8pg/ml以上なら男性ホルモン補充は行わず、他の治療を選択します。

男性ホルモンの補充療法としては、わが国では

  • 男性ホルモンの注射(2~3週に1回)
  • 胎盤性性腺刺激ホルモン(hCG)の注射(週に数回)
  • 男性ホルモン軟こうの塗布(1日に1~2回)

などが行われています。

欧米では男性ホルンの補充法として、皮膚から吸収させるパッチやジェル、口のなかの粘膜から吸収させる錠剤、3ヵ月に1回で済む注射などがありますが、これらはまだ日本では認可されていません。

男性ホルモン補充療法の副作用として、「前立腺癌」、「乳癌」、「多血症」が進行/増悪する可能性があるため、これらの病気の患者さんは男性ホルモン補充療法を受けることはできません。

また、男性ホルモン補充療法を開始した方は、これらの病気について定期的に検診をうける必要があります。男性ホルモンの投与により、「女性化乳房」、「ニキビ」、「多血症(血液が濃くなる)」、「睡眠時無呼吸」、「体液の増加」が出現することがあります。また、男性ホルモンは「前立腺肥大症」の進行を早める作用があると考えられるため、男性ホルモン補充療法中には定期的に「前立腺」の検診を受ける必要があります。

以上のことから、男性ホルモン補充療法を開始するにあたっては、体重測定・血液検査・内分泌(ホルモン)検査・PSA検査(前立腺癌の検査)・胸部X線撮影・前立腺超音波検査(前立腺肥大症の検査)を受ける必要がありますが、補充開始後の最初の1年間は3ヵ月ごとに検査を受けねばなりません。