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2018年5月31日、日刊ゲンダイ掲載、「子作り治療最前線〜血液の逆流が男性不妊を招く〜」

●2018年5月31日、日刊ゲンダイ掲載

「子作り治療最前線〜血液の逆流が男性不妊を招く〜」

 厚労省の「男性不妊の調査」(2015年度)によれば、男性不妊の原因の割合は「造精機能障害」(82.6%)、「性機能障害」(13.5%)、「精路通過障害」(3.9%)とされている。ほとんどが精子を作る機能の障害だが、その半数以上(約56%)は原因不明の「特発性」で、次いで多い(約36%)のが「精索静脈瘤」という病気だ。男性不妊治療専門施設「恵比寿つじクリニック」(東京恵比寿)の辻祐治院長が説明する。

「静脈は心臓に血液が戻っていく血管ですが、精巣の静脈(精索静脈)は構造的に逆流を起こしやすいのです。血液が逆流して、強い圧がかかるせいで精巣の上の静脈がコブ上に腫れているのが精索静脈瘤です。精子を作る細胞は熱に弱いので、お腹の温かい血液が精巣に逆流すると精子の状態が悪くなるのだと考えられています」

 原因は、逆流しやすい静脈をもつ体質的なもので、左側に出来ることが多いという。
 ただし、一般の健康な男性でも15%の割合で精索静脈瘤をもつとされ、あっても子供ができる人はいるし、特に健康に支障が出るわけではない。男性不妊の患者には、45%と高率に見られるとされている。
 近年、男性不妊の原因として精索静脈瘤が注目されているのは、晩婚の影響が大きいという。

「最近増えている2人目不妊の男性では80%が精索静脈瘤をもっているとされています。当然ながら、加齢によって精子の質や数は低下しますが、精索静脈瘤があると精子の状態が普通より早く悪くなるのでしょう。30歳までに子作りを終えていた時代には目立たなかったのでしょうが、晩婚化とともに加齢に伴う精索静脈瘤の精子への悪影響が表れてきているのだと考えています」

 精液検査での異常には「精子無力症」「無精子症」「乏精子症」「乏精液症」「奇形精子症」などがあり、患者の半数が複数の異常を合併している。精液検査では異常があれば、まずは精索静脈瘤を疑った方がいい。静脈瘤の診断は診察だけでなく、エコー(超音波)検査を必ずやってもらうこと。日帰り手術で治療すれば、70%で精子の数や運動率が術前より改善するという。

 加齢による精子の老化からは逃げられない。病気や他の要因がなくても、自然流産への影響は男性40歳以上は女性の30歳以上に相当するという報告がある。男性も晩婚は不妊リスクを高めることを承知しておこう。


■大人になってからのおたふく風邪には要注意!

■大人になってからのおたふく風邪には要注意!

大人になって高熱を出すと子種がなくなるという都市伝説(?)がありますよね。確かに精子を作る細胞は熱に弱いので、(だから精索静脈瘤ではお腹から温かい血液が精巣(睾丸)に流れこんで、精子を作る働きが悪くなるのですが)、たとえばインフルエンザとかで高い熱を出すと精子を作る機能が低下することがありますが、それは一時的なもので、悪くなったとしても3-4ヵ月もすれば精子は元に戻ります。恐いのは、おたふく風邪にかかって、精巣(睾丸)が腫れたときです!

●ムンプス精巣炎

思春期以降におたふく風邪にかかると、おたふく風邪の原因であるムンプスウィルスが精巣に炎症を起こすことがあり(ムンプス精巣炎)、そのせいで精子を作る働き(造精機能)が低下し、最悪の場合は無精子症になることが知られています。ムンプス精巣炎にかかって精巣が腫れると、その数カ月から1年後に精巣が萎縮する可能性があり、両方の精巣が萎縮してしまうと無精子症になります(J Urol. 1991;146: 54)。

●ムンプス精巣炎後の精巣(睾丸)萎縮

ムンプス精巣炎にかかり数か月から1年の間に起こる精巣萎縮は、ムンプス精巣炎の最も重要な合併症です。高度な萎縮をきたすことはまれだとされていますが、時に萎縮に伴い無精子症になる可能性があります。

●両方か?片方か?

無精子症になる危険性が高いのはどのような状況かといいますと、両側の精巣がムンプス精巣炎に罹患した場合、もしくは片方の精巣を手術等で摘除して、精巣が一つしかない男性がムンプス精巣炎にかかった場合が考えられます。
ムンプス精巣炎は片方に起こることが多いのか、それとも両方に起こりやすいものなのかを、複数の研究報告から集計した609人の検討では、片方のみ精巣炎になったのが82%で、両方ともは18%であったと報告されており、ムンプス精巣炎は片側のみに起こることのほうが多いようです(Medicine. 2010; 89: 96)。
それでは、片側のムンプス精巣炎なら心配ないのかといいますと、片側のムンプス精巣炎であっても、反対側の精巣にも潜在的な影響を及ぼして、乏精子症(精子の数が減る)、精子無力症(精子の運動率が低くなる)になることがあるため注意が必要です。
また、両側のムンプス精巣炎であっても左右同時になるとは限らず、片方の精巣がムンプス精巣炎を起こした数日後に、もう片方も精巣炎になることもあるため、片側しか腫れていないといっても油断は禁物です。

●造精機能の経過

ムンプス精巣炎後に精液所見が悪くなった場合、もちろん炎症の程度によって異なりますが、数カ月から1年程度かかって改善してくることが多く、無精子症になってしまっても、しばらくして精液中に精子が確認できたとの報告があります。その一方で、12〜15か月後も80%では乏精子症、精子無力症の所見が継続していたとの報告もあり(Medicine. 2010; 89: 96)、決して楽観的にはなれません。

●ムンプス精巣炎後の無精子症

ムンプス精巣炎後に無精子症になり、残念ながらその後も精液中に精子が出てこない場合には、非閉塞性無精子症として精巣内からの精子回収(顕微鏡的精巣内精子回収術;microdissection TESE)を試みることになります。
ムンプス精巣炎後の無精子症では、他の原因の非閉塞性無精子症より精子の回収率が高く(Fertil Steril. 2007; 88:S391)、顕微授精で妊娠が期待できます(BJU Int. 1999; 83: 526)。
当院でもムンプス精巣炎後に無精子症になったと考えられた6人の患者さんでは、全例で精子を回収することができています。

●ムンプス精巣炎にかかったら急いで精子凍結を!

ムンプス精巣炎にかかると無精子症になるリスクがあることを考えると、ムンプス精巣炎になったら急いで精子を凍結することをおすすめします。ムンプス精巣炎に罹患直後はまだ精子は出ていますので、それを凍結しておけば、無精子症になったとしても精巣を切ること(顕微鏡的精巣内精子回収術;microdissection TESE)は回避できます。もし、造精機能が低下しなかったり、経過中に精液所見が回復してくれば、凍結精子を廃棄したらいいだけです。

●ムンプス精巣炎後の無精子症では精子回収の期待が高い!

不幸にも非閉塞性無精子症になってしまったとしても、ムンプス精巣炎後の造精機能障害であれば、顕微鏡的精巣内精子回収術(microdissection TESE)で精子回収が期待されますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいです。

●ムンプス精巣炎の予防にはワクチン接種を!

おたふく風邪にかかるとムンプス精巣炎以外に無菌性髄膜炎や難聴を起こすことがあります。おたふく風邪の予防にはムンプスワクチンの接種が最も有効です。以前は「おたふく風邪、はしか、風疹の混合ワクチン」が定期接種されていましたが、ムンプスワクチンについては無菌性髄膜炎を起こすことがあるとして外されてしまいました。しかし、その後の調べでワクチンを接種したことで無菌性髄膜炎を起こす頻度より、おたふく風邪にかかって無菌性髄膜炎になることのほうがはるかに多いことが分かっています。
無精子症にしろ、難聴にしろ、おたふく風邪の後遺症は非常に恐いものです。日本ではムンプスワクチンの接種率が低いため、他の先進国と比較しておたふく風邪が多いという問題が起こっています。今まさに子作りを考えている男性も、ムンプスワクチンは接種するべきと考えます。

                              天神つじクリニック 副院長 庄 武彦

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