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■大人になってからのおたふく風邪には要注意!

■大人になってからのおたふく風邪には要注意!

大人になって高熱を出すと子種がなくなるという都市伝説(?)がありますよね。確かに精子を作る細胞は熱に弱いので、(だから精索静脈瘤ではお腹から温かい血液が精巣(睾丸)に流れこんで、精子を作る働きが悪くなるのですが)、たとえばインフルエンザとかで高い熱を出すと精子を作る機能が低下することがありますが、それは一時的なもので、悪くなったとしても3-4ヵ月もすれば精子は元に戻ります。恐いのは、おたふく風邪にかかって、精巣(睾丸)が腫れたときです!

●ムンプス精巣炎

思春期以降におたふく風邪にかかると、おたふく風邪の原因であるムンプスウィルスが精巣に炎症を起こすことがあり(ムンプス精巣炎)、そのせいで精子を作る働き(造精機能)が低下し、最悪の場合は無精子症になることが知られています。ムンプス精巣炎にかかって精巣が腫れると、その数カ月から1年後に精巣が萎縮する可能性があり、両方の精巣が萎縮してしまうと無精子症になります(J Urol. 1991;146: 54)。

●ムンプス精巣炎後の精巣(睾丸)萎縮

ムンプス精巣炎にかかり数か月から1年の間に起こる精巣萎縮は、ムンプス精巣炎の最も重要な合併症です。高度な萎縮をきたすことはまれだとされていますが、時に萎縮に伴い無精子症になる可能性があります。

●両方か?片方か?

無精子症になる危険性が高いのはどのような状況かといいますと、両側の精巣がムンプス精巣炎に罹患した場合、もしくは片方の精巣を手術等で摘除して、精巣が一つしかない男性がムンプス精巣炎にかかった場合が考えられます。
ムンプス精巣炎は片方に起こることが多いのか、それとも両方に起こりやすいものなのかを、複数の研究報告から集計した609人の検討では、片方のみ精巣炎になったのが82%で、両方ともは18%であったと報告されており、ムンプス精巣炎は片側のみに起こることのほうが多いようです(Medicine. 2010; 89: 96)。
それでは、片側のムンプス精巣炎なら心配ないのかといいますと、片側のムンプス精巣炎であっても、反対側の精巣にも潜在的な影響を及ぼして、乏精子症(精子の数が減る)、精子無力症(精子の運動率が低くなる)になることがあるため注意が必要です。
また、両側のムンプス精巣炎であっても左右同時になるとは限らず、片方の精巣がムンプス精巣炎を起こした数日後に、もう片方も精巣炎になることもあるため、片側しか腫れていないといっても油断は禁物です。

●造精機能の経過

ムンプス精巣炎後に精液所見が悪くなった場合、もちろん炎症の程度によって異なりますが、数カ月から1年程度かかって改善してくることが多く、無精子症になってしまっても、しばらくして精液中に精子が確認できたとの報告があります。その一方で、12〜15か月後も80%では乏精子症、精子無力症の所見が継続していたとの報告もあり(Medicine. 2010; 89: 96)、決して楽観的にはなれません。

●ムンプス精巣炎後の無精子症

ムンプス精巣炎後に無精子症になり、残念ながらその後も精液中に精子が出てこない場合には、非閉塞性無精子症として精巣内からの精子回収(顕微鏡的精巣内精子回収術;microdissection TESE)を試みることになります。
ムンプス精巣炎後の無精子症では、他の原因の非閉塞性無精子症より精子の回収率が高く(Fertil Steril. 2007; 88:S391)、顕微授精で妊娠が期待できます(BJU Int. 1999; 83: 526)。
当院でもムンプス精巣炎後に無精子症になったと考えられた6人の患者さんでは、全例で精子を回収することができています。

●ムンプス精巣炎にかかったら急いで精子凍結を!

ムンプス精巣炎にかかると無精子症になるリスクがあることを考えると、ムンプス精巣炎になったら急いで精子を凍結することをおすすめします。ムンプス精巣炎に罹患直後はまだ精子は出ていますので、それを凍結しておけば、無精子症になったとしても精巣を切ること(顕微鏡的精巣内精子回収術;microdissection TESE)は回避できます。もし、造精機能が低下しなかったり、経過中に精液所見が回復してくれば、凍結精子を廃棄したらいいだけです。

●ムンプス精巣炎後の無精子症では精子回収の期待が高い!

不幸にも非閉塞性無精子症になってしまったとしても、ムンプス精巣炎後の造精機能障害であれば、顕微鏡的精巣内精子回収術(microdissection TESE)で精子回収が期待されますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいです。

●ムンプス精巣炎の予防にはワクチン接種を!

おたふく風邪にかかるとムンプス精巣炎以外に無菌性髄膜炎や難聴を起こすことがあります。おたふく風邪の予防にはムンプスワクチンの接種が最も有効です。以前は「おたふく風邪、はしか、風疹の混合ワクチン」が定期接種されていましたが、ムンプスワクチンについては無菌性髄膜炎を起こすことがあるとして外されてしまいました。しかし、その後の調べでワクチンを接種したことで無菌性髄膜炎を起こす頻度より、おたふく風邪にかかって無菌性髄膜炎になることのほうがはるかに多いことが分かっています。
無精子症にしろ、難聴にしろ、おたふく風邪の後遺症は非常に恐いものです。日本ではムンプスワクチンの接種率が低いため、他の先進国と比較しておたふく風邪が多いという問題が起こっています。今まさに子作りを考えている男性も、ムンプスワクチンは接種するべきと考えます。

                              天神つじクリニック 副院長 庄 武彦

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■精子に対する免疫反応 (抗精子抗体)

■精子に対する免疫反応 (抗精子抗体)

風邪をひいたり、感染症になった時など、外部から体内に異物(細菌やウイルスなど)が侵入した際には、そのような外敵『抗原』から自分の体を守ろうとする免疫機能が働き、『抗体』を作るということを耳にされたことはないでしょうか?抗体とは免疫反応により体内で作り出されるたんぱく質のことで、抗原と結合することで体を抗原から防御します。

ところで、この抗体が不妊の原因になることがあることをご存じでしょうか?
精子を外敵と見なして体内で作られる抗体を『抗精子抗体』と呼び、抗精子抗体のせいで自然妊娠が困難になる場合があることが知られています。女性側、男性側ともに抗精子抗体ができてしまう可能性はありますが、ここでは男性側における抗精子抗体についてお話しましょう。

抗精子抗体は、不妊男性の3%程度にみつかるとされており、血液検査や精液検査によって調べることができます。抗精子抗体には,精子同士がくっついて集まって(凝集)しまう抗精子凝集抗体や、精子の動きを止めてしまう抗精子不動化抗体というものなど、いくつかの種類がこれまでに確認されていますが、抗精子抗体が精子の運動を妨げることによって、男性不妊症の原因となるのです。

では、なぜこのような抗精子抗体が作られてしまうのでしょうか?まだ分かっていなことが多いのですが,女性側では侵入してくる精子を外敵と捉えてしまい、侵入を防ごうとすることは理解しやすいですよね。

では,もともと男性の体のなかで作られている精子に対してなぜ抗体を作ってしまうのでしょうか?実はわれわれの体では、精子と血液は直接触れ合うことはないようにバリアされています。非常に大切な細胞には血液のなかに有害な物質が入っても接触しないようにできているのでしょう。脳も同じようにバリアで守られています.しかし、精巣上体炎などの炎症、精巣や精巣上体の外傷、精管結紮術(パイプカット)等の手術により、精子が血液中に入ってしまうと、体としてはこれまで出会ったことがないものですから,精子を外敵『抗原』と認識してしまい、抗体を作ってしまうことがあるのではと考えられています。

なかなかご妊娠になれない男性だけでなく,これから子作り開始という男性でも、精巣上体炎をおこしたことがあったり,外陰部を打撲したことがあったりしたら,精液検査を受けて精子の動きを確認したほうがいいです。精液検査で精子の運動性が低いと診断された方は、抗精子抗体ができている可能性がありますので、チェックすることがすすめられます。抗精子抗体が陽性であった場合には,それ自体を治療する有効な方法はありませんが、抗精子抗体ができていても、妊娠できないというわけではありませんので勘違いしないでないでください!

抗精子抗体の影響が強くなく、運動精子がそれなりに存在すれば,タイミング法や人工授精での妊娠を目指すことも選択肢として考えられます。影響が非常に強いと判断されれば、顕微授精などの治療に進んだほうがよいこともあります。(Reprod Med and Biol. 2005; 4: 133-141)

また、精子の動きが悪くて,抗精子抗体が陽性でも,抗精子抗体以外にも精子無力症の原因がある場合があります。例えば、前回のコラムにて取り上げた精索静脈瘤ですが、手術により精液所見や精子の質の改善が期待され、たとえ体外受精/顕微授精に進むにしても成功率の向上に結びつきますので,抗精子抗体が(+)であっても治療を考えるべきです。不妊の原因の約半分には男性も関わっています。ご主人に問題があるなら、それを改善して、奥様の負担を少しでも減らすのが男性不妊治療の目的のひとつです。

当院でも、精液検査において精子の運動性にある程度以上の問題のある方には、抗精子抗体の検査をおすすめし、施行しておりますのでぜひご相談ください。

                              恵比寿つじクリニック 副院長 助川 玄

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