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[コラム]男性不妊治療の最前線から

■精子のDNA損傷と精索静脈瘤手術

■精子のDNA損傷と精索静脈瘤手術

精索静脈瘤手術は、精子のDNA損傷を改善し、妊娠率を向上させる!

精索静脈瘤は不妊を主訴に来院される男性の35-40%に認められる精巣(睾丸)周囲血管の異常です。この精索静脈瘤を治療することで精液所見が改善し、妊娠率も向上することは、すでに多くの研究で実証されています。

実際に男性不妊の診療に携わっていると、今までお子様を授かれずに何年も悩んでおられたご夫妻が、ご主人が精索静脈瘤手術を受けられた後に自然妊娠されることが多く、治療効果が日々実感されます。この事実を裏付けるものとして、精子のDNA損傷の程度(精子の質)と関連づけている研究報告がありましたのでご紹介したいと思います。

一つは、当院HPの『男性不妊最新ニュース』のページでも取り上げている『精索静脈瘤手術後の精子DNA断片化の低下と妊娠率向上は関連している』という米国泌尿器科学会雑誌に掲載されている論文(Journal of Urology 2013, 189: S146-S150 / 2010, 183(1): 270-274 )で、分かりやすく言うと、精索静脈瘤手術が精子の質(DNA)を改善し、結果として妊娠しやすくなるという内容です。

このプロスペクティブ(前向き)研究では(難しいですね.プロスペクティブ(前向き)研究というのは、ある仮説を立て,それが正しいかを追跡調査していくやり方で、この後に出てくるレトロスペクティブ(後ろ向き)研究より信頼性が高いとされています)、不妊期間が1年以上のご夫妻のうち精索静脈瘤がある49人のご主人に精索静脈瘤手術を受けていただき、手術後に①精液所見が改善したか、②ご妊娠になったか、③精子DNA損傷率(DNAが傷ついている精子の割合)の変化について追跡調査しています。

49人のご主人の平均年齢は34歳、奥様の平均年齢は30歳でした。手術前の不妊期間は平均2.7年で、術後2年間の経過を追っています。

精液所見の詳細については、当院HP『男性不妊最新ニュース』のページをご覧いただければと思いますが、精索静脈瘤の手術後に精子数や精子運動率が改善し、結果として49組中18組(37%)が平均7.2ヵ月で自然妊娠されています。
自然妊娠されなかったご夫妻でも8組(16.3%)は人工授精で妊娠され、計49組中26組(53%)が体外受精や顕微授精の高度生殖医療技術(ART)での不妊治療に進むことなく、ご妊娠されました。
精索静脈瘤手術後に精子のDNA損傷率は35.2%から30.2%に明らかに低下し、精子DNA損傷率が低いと妊娠率(自然妊娠であれ、ART治療によるものであれ)が高いという関係が明らかとなったとしています。

また、別の論文(Urology 2013, 81:760-766)では、精索静脈瘤手術を受けた68人の男性不妊患者さんをレトロスペクティブ(後ろ向き)に検討し(レトロスペクティブ(後ろ向き)研究というのは、これまでに蓄積されてきたデータを解析して、傾向や違いを明らかにするというやり方です)、精索静脈瘤手術が精液所見(精子数、精子運動率、精子DNA損傷率)を改善しており、さらに妊娠率も上がっていたと報告しています。

精索静脈瘤手術を受けた68人の平均年齢は33歳で、その奥様の平均年齢は31歳、不妊期間は平均2.6年でした。

精索静脈瘤手術後に68組中17組(25%)が自然妊娠され、自然妊娠されなかったご夫妻のうち3組(4.4%)は人工授精でご妊娠になり、ART治療での妊娠を含めると35組(51%)のご夫妻がご妊娠になっていました。

精索静脈瘤手術により、精子数、精子運動率が改善し、精子DNA損傷率も40.8%から24.5%に低下しました。とくに術後の精子運動率の上昇とその後の妊娠(自然妊娠、人工授精、ART治療など問わず)に関連がみられました。

精索静脈瘤手術が精子のDNA損傷率を低下させることは明らかですが、それが精索静脈瘤手術による妊娠率の向上にどれくらい関与しているかは、さらに研究を進める必要があります。

また、精子のDNA損傷は喫煙や薬物、炎症によっても引き起こされますが、そのような状況においても精索静脈瘤手術は精子DNA損傷を低下させますから、治療の選択としては手術に進まれるのが良いと考えられます(Journal of Urology 2010、184(4): 1578 )。

                              天神つじクリニック 副院長 庄 武彦

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